大宜味村田港という集落の山頂には、六田原(ムタバル)という展望台がある。
村一番の絶景ポイントであるこの場所は、1980年代に40,000㎡以上にも及ぶ大型リゾート複合施設が建造されてできたものだ。
しかし、那覇空港から遠く離れた北部やんばる地域に比べ、本島中部の恩納村における超大型リゾート開発が大成功し、観光客は中部地区滞在がメインとなった。客足が向かない北部リゾート開発は完全なる不発に終わり、僅か数年でこの地の施設は立ち行かなくなり廃業となった。さらに、不渡りは解体途中の工事にまで飛び火してしまう。こうして絶景を前に一度後ろを振り返ると巨大な廃墟が無残な形で残ることとなった。
それから数十年経った今現在もこの土地は荒廃を辿っている。
実はこの山は、大宜味村において最重要となる神の御神体として崇められている。龍が降りてくる場所であることなど、多くの言い伝えがあるのだ。さらに、やんばるにおける自然保護区域で大宜味村内唯一の特別保護区というのがこの山である。
同村にとって、最も大きな意味を持つこの場所は、雄大な美しさと巨大な負の遺産が同居している。
村民にこの地のことを聞いたところ、ほとんどの人々が口を揃えて「あの場所には近づかない」と言う。まるで祟りでもあるかのように。
週末の夜には、都会などから若者による幽霊廃墟ツアーが実施されるほど負のスポットとして認知されている。最悪なことに、2020年3月にはこの地で殺人事件まで起こってしまった。この負の連鎖を止めなければならない。これには多くの人々の力と政治的介入も必要となるだろう。
引き続きこの地の調査と現土地所有者および村政との協議を進めながら、1日も早くこの地があらゆる意味で解放されるよう活動を続けてゆく。