大宜味村で農家を営む久子さんからその物語が紡がれた。
2005年前後、暑い日差しに耐えながら日々農業に勤しむ高齢者の姿を眺めていた久子さん。
農家さん達が少しでも快適になれたらと思い続けた日々の中で、自分を含めて農家さん全てが首にタオルや手拭いを巻いていることに気づく。
そこからskettoの原型は生まれた。

「単にポケットが縫われた手拭い。」
そのシンプルな構造だからこそ沢山の人を助けることになると久子さんは信じた。
身体を冷やす効果が一番高いのは、首の側面を流れる頸動脈。頸動脈を冷やすことが短時間で身体全体を冷やす効果が得られると知った久子さんは、ポケットの位置を何度も修正しながらついに完成させた。彼女はそれを「助っ人さん」と命名した。
そして実用新案を取得するに至る。

しかし、久子さんも家業である農業の日々の忙しさに流されながら、商品開発どころか助っ人さん事態の存在が薄れていった。
そこから10数年時を経た2020年。久子さんとPOLYHEDRAは、共通の知人を通じて出会った。
「実用新案含めて、助っ人さんを使ってやってくれませんか。」
そんな言葉と、久子さんが助けてきた農家たちのストーリーに可能性を感じた我々は、地域活性化の概念をもとにプロジェクト化した。

「単にポケットが縫われた手拭い。」これが商品開発における最初のネックではあった。
これで売れるのかという不安。
しかし、それを払拭させたのが、人口3,000人ほどの村から生まれるグッドデザイン賞という目的誕生の瞬間だった。

大宜味村は、幸いにも健康長寿として世界から認められた地域だ。
そんなウェルネスな生活を送る人々のほとんどが農家であるということ、そして働き方や食事の取り方、野草を片っ端から調べ上げた薬草開発。この村にはグッドデザインの資質(ポテンシャル)が根付いている。

さまざまなコンセプトワーク構築し、それを多面的に観察しながら誕生したのが『sketto』だ。
日本タオルと呼ばれる手拭いに保冷剤を格納できるシンプルなポケット2つ。
そこに味付けするのは、大宜味村含めたやんばるの地域で活躍する草木染の職人たち、そして地元のマテリアルを象徴的に表現したデザイン。デザインの表現は無限にある。
それ自体が不動のコンセプトワークとなる。縫い上げるのは地元の女性たちだ。

そしてPOLYHEDRAが本職とする研究開発は、やんばるの自然に迫る外来種植物の繊維化というプロジェクトを立ち上げた。近い将来、skettoの素材にそれらの素材を含ませることを目標としながら、これからも進化する商品となるだろう。

design:久子
creative director:斎藤のりこ
total produce:Shin Ota

sale plan:やんばるサスティナブル・ビジネス研究会

まずは草木染とのコラボを実現した。福木、月桃、どんぐり、藍葉など地域の象徴的な植物たちだ。
保冷剤を挿入できるポケット部分は頸動脈を包むために何度も縫製位置を変更しながら開発。
キャッチも製品同様にシンプルさを基調とした。目的は頸動脈を冷やすことである。