沖縄県は「亜熱帯気候」と呼ばれることが多い。

しかし亜熱帯という気候に定義はなく、冬季でも平均18℃以上の気温で湿度が高い地域の「熱帯」と日本本土の比較的穏やかな寒暖地域である「温帯」のちょうど中間に位置する緯度25°から30°あたりを亜熱帯地域と呼ばれるようになった。年間平均気温が20℃以上ある月が多く、四季という概念が薄いことが特徴である。

沖縄はちょうどその亜熱帯にすっぽりと覆われた地域である。高温多湿であることから生態系も日本本土では見られない貴重なものばかりである。

気団が起こす恵みの雨

沖縄県の位置する緯度圏は、そもそも雨が極端に少ない地域である。中東やアフリカのリビア砂漠、サハラ砂漠がその地域である。そんな中で、沖縄に至っては実に雨が多く、日本全国での年間日照時間は最低基準である。「キラキラの晴天」という沖縄のイメージは大きな間違いであり、訪れた滞在期間中ずっと雨に見舞われたという苦い思い出を語る旅行者も少なくない。それは、この地が東の最果てであることが関係している。大陸性気団と海洋性気団という異なる空気がぶつかる事で前線が発達し、天気が移り変わる地域に位置しているのだ。台風が特に多いことでも有名だが、水という資源を鑑みると全ての現象が豊かな地として役立ってくれている。

沖縄本島北部のやんばるは、沖縄における水瓶という最重要な役割を担っている。豊かな自然と、低標高の山々の緩やかな傾斜が雨水を長時間保持しているのだ。そのため、中南部ではほとんど見られない美しい河川が幾つも存在しているのだ。

岩石と広葉樹に抱かれた奇跡の水

この地の自然水は、実は硬水である。ph値7.8と国内の通常とされる数値よりもかなり高く、カルシウムがも多く含まれている。その理由は、琉球石灰岩の中で長い時間を掛けて浸透してきた過程によるものが大きい。また特有の広葉樹林による湿度が絶妙に干ばつ化を抑制し、雨水が地表全体に行き渡ることで、より多くの水量を石灰岩内部に運んでいるのである。

まだ推測ではあるが、やんばるという地域の地下には想像を絶する美しい鍾乳洞が幾重にも伸びているのだろう。